♪フランス音楽<歴史>

フランス音楽は、古くは5、6世紀頃のグレゴリオ聖歌の創世期にも起源を発している。しかし、フランス独自の音楽文化は、特に9世紀の中世初期から今日に至る長い歴史をたどることができる。その十数世紀に及ぶ歴史の中で、フランスはイタリアやドイツ諸国の影響を受けながら、独自の音楽文化を発展させた。

★中世、ルネサンスの時代
★17〜18世紀の音楽
★19世紀と20世紀の音楽


☆中世、ルネサンスの時代

 9世紀から14世紀のフランスの芸術音楽は、キリスト教徒の密接な関係の中で、グレゴリオ聖歌のような単旋律聖歌から、次第に多声音楽へと発展していった。特に12世紀の後半、ノートルダム楽派の活動は、多声の宗教音楽の発展に貢献し、また、これらの音楽の発展とは別に、単声の世俗歌曲の創造的な活動も盛んであった。それは、一般に詩人兼歌手の吟遊詩人と呼ばれている人々によって歌われ、宗教的な影響の下に世俗的な内容の歌曲を作り出した。一方、ルネサンスの時代に入ると、多声の宗教音楽はブルゴーニュ楽派から、多くのフランス人からなるフランドル楽派へと展開した。ブルゴーニュ楽派は、世俗的なシャンソンなどを開拓し、フランドル楽派は、宗教音楽を中心に対位法的技術を発展させ、ジョスカン・デ・プレなどによって芸術上の頂点に達した。


☆17〜18世紀の音楽

 17世紀になるとフランスはイタリアの影響の下に、ルイ13世及び14世のベルサイユ宮殿を中心に展開した。そこでリュリ、ラモーらによって、宮廷バレエや宮廷オペラの様式が完成され、フランス古典音楽の基礎を確立した。そして、ルネサンス時代に盛んであったリュートの音楽は、その伝統に立ちながら優雅なクラブサンの音楽に継承され、フランス独自の鍵盤音楽が創造された。そこではクープラン、ラモーらが活躍した。18世紀に入ると、フランス音楽はイタリア音楽との対立が顕著となり、世紀中頃オペラ・コミックというジャンルが生み出された。


☆19世紀と20世紀の音楽

 音楽の中心をパリのオペラ座に移した19世紀のフランス音楽は、グノー、マスネ、ビゼーを中心に、数多くのオペラが生み出された。この時期のフランスの音楽は、ドイツの影響下にあったが、19世紀前半の唯一のフランスのロマン主義音楽の旗手として、ベルリオーズがいる。彼は、「幻想交響曲」によって一躍その名声を高め、リストなどの交響詩の先駆者となった。

 そのような状況の中で、1971ねんサン・サーンスによって始められた国民音楽協会は、フランス器楽音楽の復興を目的として始められ、中でもフランク、フォーレ、ダンディ、ショーソンらの活躍によって近代フランス音楽の発展の基礎が築かれた。これらの資産をもとに活躍したのが、ドビュッシーとラベルである。

 ドビュッシーは、19世紀に支配的であったドイツロマン主義を否定して、彼独自の作曲理論を打ち立てて印象主義を創始した。一方、ラベルは、その新鮮な音響感覚と優れた弦楽楽法によって、この時期のフランス音楽の黄金時代を気づき上げた。これ以降、パリはヨーロッパ音楽の中心地のひとつになったのである。

 第一次大戦後の音楽は、「家具の音楽」の作曲で知られるサティーと詩人コクトーの影響によって結成された「フランス六人組」の活動が顕著であった。メンバーはオネゲル、ミヨー、プーランク、デュレ、タイユフェール、オーリックで、彼らは新古典主義を掲げて第二次大戦までの音楽界をリードした。

 第二次大戦後のフランス作曲界は、メシアン、ジョリベ、デュティーユ、ブーレーズに代表される前衛的で主知的な作曲技法により、現在もヨーロッパの指導的な立場に位置している。


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